色覚障がいの人々の 安心・安全な暮らしを実現する理想の補正レンズ

色覚障がいの人々の安心・安全な暮らしを実現する理想の補正レンズ

小学校での色覚検査が無くなり無自覚の人が増えている。
日本の色覚障がい者は300万人存在するといわれている。
医学的に治療法がない色覚障がい者にとって、補正レンズの利用で趣味・生活・学問・仕事等で、選択肢が増え希望が広がることは朗報である。
 

大阪アイバンク理事長
多根記念眼科病院名誉院長 眞鍋禮三氏

ネオ・ダルトン株式会社
代表取締役社長 足立 公氏
 

眞鍋 20世紀末に小学校での色覚異常の検査は人権蹂躙だからやめるように文部科学省からの通達がありました。色覚異常については昔は学校に入学すると義務的に検査を行ってきましたが、治らないのに色盲を見つけるのは差別になるということで取り上げてはいけないことになりました。医療の分野においても性染色体を医療で変えることができないように、色盲は生まれつきのもので治療法もないことから医療の分野から外したほうが良いというのが当時の考え方でした。我々自身も色覚異常は男性と女性を区別するのと同じくらい触れてはいけない問題だということになってしまいました。

 ところが4、5年前から医療に対する考え方が変化しまして、病気を治すだけが医療ではなく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ---生活の質)を向上させることが医療だと言われるようになり、信号の色が分かりにくいなどの不便を感じている方を医療が手助けしようという考え方に変わってきました。
 この病院にも、まれに色弱の方が来られますが、医療では何もすることができないため、御社のような企業を紹介するシステムになっています。
 

足立 前身のダルトンは平成2年より中国製のレンズを取り扱ってきましたが、昨年の4月より国産化に向け、また当社では色感度測定器と呼んでいますが、十人十色の色弱者の見え方それぞれを測定する器械の開発を進めるために新しいダルトン、すなわちネオ・ダルトンを立ち上げました。
 

眞鍋 色弱者はどのくらいおられますか。
 

足立 統計では男性で20人に1人、女性は400~450人に1人です。学校の1クラスに1人はおられる計算になります。日本全体ですと300万人になると言われております。ちょうど血液型のAB型の男性の人数と同じくらいの人数です。白人の方では比率も高く全体数ももっと多くなります。
 先ほどの先生のお話のとおり1993年までは小学1年生、4年生、中学1年生,高校1年生と4度行われた色覚検査が1994年から8年間は小学4年生に1回、2003年からは全く行われなくなりました。

 4回の検査から回数が4分の1になり、それから8年で検査が行われなくなるまで、あまりにもスピードが速かったのではないでしょうか。現在一度も検査を受けていない方が就職の際に自分の道を決めていながら色覚障がいのために不採用になってしまい、突然の路線変更に苦労されることが多いです。


 

このようなことを避けるためにも事前に自覚を持つ、あるいはご両親が知っておく必要があると思います。
 就職試験の直前に弊社に駆け込まれる方が多いのはそういった理由からだと思います。
 まず弊社の補正レンズの分類からご説明しましょう。色弱者1万300名を対象に調べると緑に対する感受性が強いか赤に対する感受性が弱い方が64%、赤に対する感受性だけが弱い方が34%、残りの2%の方が全色盲か青に対する感受性が低いということが分かりました。
 人間の脳は目から入ってくる三原色を通常は錐体で100%ずつ感じ取りますが黄色などは赤と緑の比率で脳が判断します。例えば緑を強く感じる方は100%以上、あるいは赤を弱く感じる方は100%以下となりますと色はお互いに影響しあいますので黄色も緑を強く感じてしまうことになります。
 それぞれの方の感度を測定するのが当社の色感度測定器になります。ずっと使われていました石原式、パネル式D15がありますが、1種類の検査方法ですとしっかり見極めることができません。
 測定の結果、それぞれの感度にあったレンズを選定しております。
 32種類のレンズをご用意しておりますが、98%の方は12種類のレンズで調整できます。
 

眞鍋 全色盲の方は視力自体が悪く、昔は弱視と診断されることもありました。視細胞には錐体と桿体があり、桿体は光覚の感度は良いけれど色は分からない、錐体は感度は悪いけれど色覚を有している。視野の中心の部分は錐体で、周辺は桿体、夜盲症は桿体の障害で起こり、視力とは関係ないのですが、夜盲が主たる障害です。
 もともと桿体がない方、網膜色素変性症の場合は進行性の病気で視力まで悪くなってくるので、医療の中に入れられて進行を遅らせることが必要でした。それに対する薬物療法が奏功して、長く視力を保つようにしています。そういう点ではブルーベリー等の目に良いと言われる物質を摂取し、少しでも長く保たせようとしているのです。

 医療のほうも考え方がだんだんと変わってきていますが、両方をうまく取り入れて生活の不自由を感じている方の手助けをするということからも医療に入れるべきだと思います。
 

足立 知り合いの娘さんが小学校の教員です。校内に「色覚障害者が少しでも暮らしやすい社会作りを目指す」NPO法人 TrueColors の制作したポスターだけでも貼って、無自覚の方に自覚していただきたいという話を持っていきましたが、色覚障害の方はいないと言われました。
 

眞鍋 昔から色盲の方の比率は5%あり、男性の劣性遺伝ですので女性には少なく男性は多いということが遺伝的にも証明されていますが、現在は色覚異常者は病院に行ってはいけないことになっており、診断してはいけないことになっています。
 差別に繋がるからでしょうが、医療の現場には文部省(現在の文科省)からの指示がありました。
 

足立 当時もかなりの論議があったと記事に載っていますが差別撤廃が優先されたということで現在のように検査が無いと、学校生活では守られるのですが、一歩社会に出ると、自覚がないために差し支えが生じるのです。先日も18歳の方が消防署を受けましたが健康診断ではじめて色覚障害を指摘されました。


 

その後、当社にご相談に来られメガネをお作りになられ、ようやく合格された事例があります。
 このようなことを防ぐために、事前に検査を受けていただきたいと思いました。治療ができなくても補正メガネを利用されるという方法があります。この補正メガネの存在もぜひ知っていただきたいと思います。
 色盲と色弱の違いをご説明しますと、色盲は一つの色を感じる細胞が欠落している方、色弱は例えば赤を感じる視細胞は0ではないが一般色覚者から見れば100%以下で赤を感じにくい方です。
 

眞鍋 全色盲は非常に少なく、数としては何万人に1人の割合です。
 

足立 見え方はセピア色の世界というのをよく聞きますが、実際にどのように見えているか分かりませんが、濃淡だけという感じでしょうね。
 先日、おひとり当社にご相談に来られましたが、結局、補正できませんでした。
 

眞鍋 錐体細胞自体がないので難しいと思います。
 色盲の研究に熱心な大学もありましたが、現在も熱心に研究している学校があります。一般の医者からは、研究をするのは問題ないが医療でないものに医者が関与するのは、昔は視力でも0.01以下に下がってくると医療から外されて身体障害者、視覚障害者というレッテルを貼られ、その後は行政のほうに任せていました。子どもの場合、普通の学校には通えないため盲学校や弱視学級に行きなさいというように医療から外され、行政は信号の色を赤と緑から赤と青に変えるなどの努力はありましたが、病気を治すという意味ではありません。

 それは生活の質を上げているわけですが、そのうちに医療は病気を治すだけではなく身体障害者で杖の使い方やコンピューターで点字を打つとタイプライターと同じように働いて、パソコンの使い勝手の方は盲目の人のほうが上手に使われます。点字は6つの点ですべてを表しますが、パソコンのキーは50~100もあるので、点字機を打つと普通のタイプライターと同じように日本語に変換されるものがありましたが、現在はパソコンで点字を訳して音声にしてくれるものができたときに、ろう学校の先生やコンピューターの専門家など眼科の先生と関係ない方も集まって、ロービジョン学会ができました。その際に杖のつき方一つでも、その人の生活の役に立つわけです。
行政は駅のホームに盲人用の黄色い敷物を入れました。そのようなものはその頃からできてきました。それを見て、今度は医療のほうが生活の糧にするのが良いということで、ロービジョン学会を立ち上げましたが、医療の方にそういうシステムはできていません。ロービジョン学会は日本語に訳されていませんので、まだ日本には無いということです。

 私も学会に参加しておりますが、色盲等で困っておられる方々の手助けをされている御社のような方々と協力していくべきだという話になっています。なかなか政府は認めてくれませんので難しい問題です。
 

足立 そうですね。そういうお考えの方々がいらっしゃるということに感動しました。
 

眞鍋 点字を訳して音声にするパソコンは盲学校などでは普及しています。目の見えない方がパソコンを打てるようになりましたし、点字が読めない方には音声で知らせるというシステムができています。
 色弱の問題は、しばらく触ってはいけないものになっていましたので、今後、私も勉強させていただきます。
 

足立 色覚検査は無くなりましたが、社会的には色覚バリアフリーの動きもあります。テレビ等でもテロップの文字に縁取りをしたりして見えやすいような配慮がなされるようになってきましたが、基本的な問題の解決にはなっていません。自然の色も変わりません。

 就職試験の時も窓口は受け入れても、条件として「実務に支障が無いこと」という項目がある所も多いのが現実です。補正レンズで色が見分けられるということは、生来の見え方を温存し身体を傷つけるわけでもなく、とても便利なメガネですがなかなか普及していません。

情報の80%は目から入るといわれています。
 例えば大阪の地下鉄の路線図ですと東梅田の谷町線、堺筋線、御堂筋線などたくさんありますが路線が色で分けられています。矢印も駅の中で谷町線は紫色というように色によってサインがあるというのが色覚障がい者にとって非常に分かりにくいものになっています。色覚障害者にとりまして、世の中はなかなかやさしくなりませんね。社会的に大きな問題として捉えてほしいですね。
 ロービジョンの方が拡大鏡を求められるときに行政から補助金がありますね。
 

眞鍋 そうですね。医者が身体障害者であることを証明することによって補助されます。
 

足立 10万円位の拡大鏡が1万円程度で手に入るそうです。補正レンズも補助の対象になると良いのですが、一対が税込7万3500円です。
 色弱者が義務教育を受ける際に年間2万円を支給するという町がありますが、問い合わせたところ1件も支給の実績がありませんでした。差別意識から名乗り出にくい環境なのかもしれません。また検査がないので自覚のない子どももおられるかもしれませんね。

 知り合いの自動車教習所で教官の方が黄色の点滅信号で自動車を必ず停止させる生徒さんがいると言う話を聞き、色覚障がい者かもしれないと思いました。赤黄青の信号ならその設置場所で色が判断できますが、赤のみの点滅、黄色のみの点滅の場合は理解しにくいことがあります。その後ご本人に確認するとやはり色弱と判明したということがありました。

 自覚のないまま免許を取得して事故に繋がるということもあるかもしれませんので注意が必要ですね。
 

眞鍋 確かに制度の上で盲点になっていますね。
 

足立 義務教育中は差別から守られたとしても社会に出るとさまざまな困難がありますので、そういう面も含めてトータル的な見直しが必要ですね。
 

眞鍋 視覚障害者はライトハウスが職業訓練などをおこなっています。
 

足立 視覚障がいの方から伺ったのですが「見え方」のモニターを企業から依頼されることがあるそうなんですが、その中で色覚障がいのモニターが全く見つからないそうです。言わない方と20歳までの方はわからないということです。
 やはりできるだけ早く検査を受けられるほうが良いですね。高齢になって補正レンズを利用された方から、早くにわかれば対応できたのにというお話をよく耳にします。

 多くの方が手軽に利用できるように補助の対象になることを願いたいです。
 技術的には近視または老眼のレンズに加工しますのでひとつのレンズで作ることができますが近視や老眼の土が進むとレンズを変えなければならず高額になります。そのため当社では補正レンズのみを扱っています。

 現在使用している視力矯正用のメガネの上に取り付けて利用される方も多くおられます。

 視力矯正はコンタクトレンズを併用される場合もあります。
 補正レンズを利用されるまでの色の世界から、一般の方が見ている色の世界に変わると最初は違和感を感じられるようです。
 

眞鍋 コンタクトレンズでもできますか。
 

足立 技術的には可能です。医療との連携が必要になりますね。コンタクトレンズは医療器具ですから外国で開発されたものを輸入することは可能だと思います。現在のところ国産では難しいと思います。
 

眞鍋 コンタクトレンズですと見た目にもわかりませんので普及にはずみがつきそうですね。
 

足立 今後はぜひ、そういったことにも取り組んでいきたいと思います。本日は有難うございました。
 

大阪アイバンク理事長
多根記念眼科病院名誉院長 眞鍋禮三氏

ネオ・ダルトン株式会社
代表取締役社長 足立 公氏


資料請求はこちらから

大阪本社

〒541-0056
大阪市中央区久太郎町4-2-10
大西ビル3F
FAX:06-6281-0040